美容つれづれ随想[師弟対話]

サロン現場でのリアルな問題解決を紹介

店販の極意

(ある地域に5店舗23人の店長、スタッフで運営しているJ美容室がありました。恒例の夏のヘアケアキャンペーン45日間真っ盛り、この店のキャンペーンのシステムは4人グループ制で個人とグループの目標がありました、その中のK店長率いるAグループに入店9ヶ月、20歳のMちゃんがいました、Mちゃんは当時インターンです、新人ということで、目標はダメ元の10万円です。今日も店長Kさんが60代のお客様で某化粧品メーカーの会長の奥様Sさんの髪を施術していたところに、ヘルプのMちゃんがお客様のSさんに話しかけます)

インターンMちゃん:「お客様、おはようございます、少し当店のへアケア製品のお話をしてよろしいですか?」

お客様Sさん:「いいわよ、、な~に?」

店長Kさんの心のゆぶやき:(バカ!、この方は某化粧品メーカー会長の奥様だよ!当店のヘアケア製品の話をしたら御気分を害するでしょう!、やめなさい!)

Mちゃん:(K店長の心なんか全然分からず)『ありがとうございます、実は今朝もミーティングでオーナーから「うちで20年前から取り組んでるこのN製品で日本で一番、お客様の髪を美しくする店、、と言われる店になりたいんだ」という話があったんです。』

Sさん:「日本で一番、、とはすごいわね、オーナーさんが、ましてや、20年間言い続けてるなんて、、ますます、すごいわね」

K店長の心のつぶやき:(あれ!?意外な展開、、オーナーの話は私も耳にタコができるほどいつも聞いてるけど日本一、、なんて、、冗談半分だし、、)

Sさん:「オーナーの言うことそのまま来店客に伝えよう、、とするあなたも若いのに偉いわね~」

K店長の心のつぶやき:(あれ~、変な展開になってきたな~)

Sさん:「ところで、オーナーさんの言ってるヘアケア製品ってどれなの?」

(Sさんの椅子の前に展示してあったので、、それを指さしながら、、)

M:「これです、とくにこのスキャルプローションは、髪の根元2センチを立ち上がらせますので、ヘアデザインにボリューム感がすごいですよ!」

Sさん:「へ~ほんと、私も年取るごとにトップあたりがぺシャンとしてきてね、、うちの製品ずっと使ってるんだけど、、いや~何でもないわ、、独り言、独り言、、」

(Sさんがが勧められたローションをジックリ見ながら)

Sさん:「ところで、この中に何が入ってるの?」

K店長の心のつぶやき:(ああ、これでジ、エンドだ、だってMちゃんローションの内容成分なんて知らないし、、よかった!これで私のハラハラも終わる)

M:(待ってました、、とばかりにニコニコしながら、、)「さっきお話した日本一綺麗な髪にしたい、、というオーナーの心がいっぱい入ってるんです!」

K店長の心のつぶやき:(うわ~参ったな、すごいこと言うな~、この店で何十年になる私には逆立ちしても出てこないセリフだな~)

Sさん:「すごい!あなたって本当に可愛いわね~、、うちの会社にもそんなことを言ってくれる社員が欲しいわね~、分かったわ、帰りに1セット頂いていくわ、」

K店長:(思わぬ結果にビックリしながら)「Mさん、良かったわね~Sさん、ありがとうございます!この子、新人で今回のキャンペーンが初めてで、目標持って頑張ってるんです、」

Sさん:「えっ!新人なのに、もう目標あるの、、、じゃあ2セット買ってあげるわ」

Mさん:「えーっ!本当ですか?ありがとうございます、ますます、頑張ります!髪が必ず良くなりますので、、、」

K店長の心のつぶやき:(すごいな~、店販は自分の力量と商品の知識量、、と思ってたけど、、、Mちゃんの店販は両方とも無くて、ただただオーナーの思いを直球で伝えただけなのに、、でもそのことが、最強の店販なのかな、、、ショック!)

(こんな調子でキャンペーンも30日も過ぎた頃、K店長のフォローもありMさんの実績は、目標をはるかに超えて数字は40万円を少し越えてました,この頃MさんはK店長と相談して目標を60万円にしていました、ある日MさんはK店長に、、、)

Mさん:「店長、毎日お客様がこんなに、買っていただいて、、、感謝しかありません、明日、休日なんですけど、最初に買っていただいたSさんが、あの時、いつでも、遊びにいらっしゃい、、と言ってくれましたし、その後商品の使い心地がどうなのか、気になるんで、ご挨拶に伺ったら駄目でしょうか?」

K店長:「うーん、普通はお客様のご自宅に伺うのは、非常識なんだけど、でも、あの時Sさんは真剣に、遊びにいらっしゃい、、と言ってたから、、、前もって電話なんかすると返って気を使わせては申し訳ないんで、、、いいんじゃない、その代わりおうちにいらっしゃっても玄関口でのご挨拶程度にね」

Mさん:「分かりました!」

(休日、Sさん宅玄関、Sさんご在宅)

Sさん:「あら!あの時の新人さん、、、よく来てくれたわね、、、」

Mさん:「先日は、ご来店ありがとうございました、いつでも、遊びにいらっしゃい、、って言って下さいましたので、お言葉に甘えて、ご挨拶だけでも、、とお留守覚悟で伺いました、、、その後商品の使い心地はいかがですか?」

Sさん:「私、何十年て、天頂部の髪がペシャンコで悩んでたのが、使い出して一週間目位からブローするとウソみたいにボリュームが出てきて、ビックリしっちゃて、、ただ泡がたたないシャンプー、、と聞いてたけど本当ね~、、でも使うごとにキメ細かい泡が出てきてるけどね、、」

Mさん:「ああ、それでいいんです、お使いただいている方は、皆さんその過程で改善してますから、、よかった!、、それだけが心配で、伺わせていただきました、店長から長居をしちゃいけない、、と言われてますのでこれで失礼いたします、またのご来店をお待ちしてます」

Sさん:「いいのよ、、、そんなにあわてなくても、、ところで、あの時目標がある、、って言ってたけど達成したの?」

Mさん:「最初の目標は、お蔭様で達成できましたけど、店長と相談して、目標を6倍

にして今、40万円を少し越えたとこです」

Sさん:「まあ、偉いわね~、普通の社員は目標上げられただけで不満を言うのに、6倍の目標になって、、、それをまた素直に頑張ろう、、としているなんて、、、ちょっと中に入んなさい、ちょうど、6人の友達が来ていてティーパーティやってるとこなの、、私がこのシャンプー紹介してあげるから、、、」(Mさんをみんなに紹介しながら)「私が前からお世話になってる美容室の新人さんでMさんていうの、この子にに勧められてシャンプー使ってるんだけど、、、」、、、(と言いながら結局全員買ってくれることに、、、)

Mさん:「皆さん、本当にありがとうございます、日本一綺麗な髪にしてあげたい、

、、、といつも言ってるオーナーがどれほど喜んでくれるか、、、と思うと涙が出るくらい嬉しいです」

Sさん:「ほら、さっき言ったように、また、彼女の口からオーナーが出てきたでしょう、こんな社員を持ってるオーナーさんて幸せよね~皆さんも買ったシャンプー使うだけじゃなくて、店にも行ってあげて、、」

(結局この時だけで6万円売れてキャンペーン期間で65万円の結果でした、その後、奇妙な現象が起きました、若い新規の女性客が次々と来店されるのです、そして来られるお客様一人一人が「あの~Mさんてどの方ですか?」って聞くもんですから、「何かあったんですか?」って聞いたら「わが社の社長が朝のミーティングのときに、、、うちの家内がJ美容室に素晴らしいMさんという新人スタッフがいる、髪を切るなら勉強がてら是非その店で切ってMさんにも合ってらっしゃい、、、と言われまして、来ました」)

※師弟、、、という言葉はこの時代、死語になりそうですが、実は世間に打って出る時の最大最強のパワーを持っていると思いませんか?