美容つれづれ随想[師弟対話]

サロン現場でのリアルな問題解決を紹介

店長、スタッフの育成

熊本県の、ある美容室Kオーナー(60代)と,店長二人A、B(40代)が社長Oのもとへ上京してきました〕

  • Kオーナー:「社長、聞いてください、私も店を始めて出したのは40年前になります。最初は15坪、その後、26坪、40坪、30坪、と4店舗になりましたが、時代の流れと共に、15坪と40坪の店を閉店しました。あのころは、勢いもあったし、時代も良かったから売り上げも順調だったけど、ここんとこ、売り上げも、客数も減少して参っちゃう、このままだと、また1店舗つぶさなきゃならないと思うんです、店長達にもハッパかけるんですけど(横に座ってる店長たちを見ながら、、)全然責任感なくて、、それで今日社長に意見してもらおう、、と一緒にお邪魔しました」

O社長:「いやー、わざわざ九州から3人で、お疲れさんでした、2店舗目の26坪を出店してから4ヶ月くらいの時でしたよね、、先生とお付き合いが始まったのは、、」

(ここで、しばし当時のお付き合いに至る話で盛り上がる)

Kオーナー:「社長、私が修行時代、店長やってたころは、オーナーよりも早く出勤して、当然一番最後まで店で働いていたもんですよ、それが今じゃ(と言いながら店長たちを見る)

O社長:「まあまあ先生、、そう興奮しないで、、、う~ん、そうだな~、、感情の行き違いは別として、大事なことは、客と売り上げが増加することなんですよね、、、本当は1店舗撤退するとお聞きしたあたりからオーナーに伝えたい事があったんですが、一国一城のあるじに対して聞かれもしないのに言ったら余計なお世話、、と叱られますから、、でも今日は聞かれましたので、、、分かりました!じゃ今日はオーナーと店長さん二人もの方が飛行機代と貴重の時間を使ってわざわざ来てくだっさったんですから、本当のことを言いますね、かなり、厳しい話になりますがよろしいですね(オーナーは、スタッフに意見してくれるものと、待ってました、、とばかりの顔)」

「先生、最初の店オープン前日の40年前を思い出してください、、、スタッフ3人を抱えて、明日お客さん来てくれるかしら?、もし来てくれなかったらどうしょう、、借金あるし、スタッフの給料もあるし、、思うだけで胃袋からあげそうになったあの時、、、そこらじゅうに向かって手を合わせて「なんとか繁盛しますように、、」と祈らずにはいられなかったあの時、、、人間思うにあの時が一番謙虚で真剣で人間らしかったんじゃないでしょうか。スタッフのやる気がどうの、態度がどうの、、そんな事考える暇もなかった、ただただオーナー自ら店を何とかしなくちゃ!、、とひたすら前だけを向いて戦いを挑んだ日々、、

それが、店が増えるごとに、そこそこの売り上げと、そこそこの来客数と、そこそこの

展開をする内に、オーナーに時間と余裕が出来てきたあたりから、今まで前ばかり向いて戦ってたオーナーがクルリと後ろから着いてきたスタッフ達に向かい「あなた方、聞きなさいよ、美容師とは、、ファッションとは、、人生とは、、」と言う説教が始まりだすんですよね(これを聞いてた店長たちがクスクス笑う)

Kオーナー:(店長たちに向かって)「あんたがた、なに、笑ってんの!」

O社長:「いや~先生、これは人間みな同じで私自身にも言ってるんです。店長スタッフに向かって「今月の売り上げは、どうなってんの!、、」とハッパをかけてる経営者を見かけますけど、店長スタッフはお客が来ないことには売り上げを上げようがないですよね、私はお客を連れてくるのはオーナーの仕事、但し一度来店されたお客を何度も来店してもらうようにするのはのは店長スタッフの仕事、、、と、分けて思っています」

Kオーナー:「でも社長、せっかく来てくれてるお客様を嫌な気分にさせて、来なくならせたスタッフもたくさんいるんですよ!」

O社長:「ハッハッハッ、、うちにもいっぱいいますよ、この横で聞いてるうちの営業のMなんかどれだけお客さんをつぶしたか(Mは横でちっちゃくなってる)、Mを1人育てるのにどれだけのお客さんを犠牲にしたか、、それこそお客さんの屍、累累ですよ(Mは益々ちっちゃく、、)

それでもオーナーは一歩も引けないのが宿命なんです、昔は予算のこともあってオーナー自らチラシをまいてましたよね、でも今は体力がないんですから、折り込み、プロのポスティング屋、など自分の美容室の営業マン変わりを雇って外に打って出ることです、、私が言いたいのはひとたび店をオープンして旗を上げたからには生涯外に打って出る覚悟がないと、店は持続しない、、と言う厳然たる道理です。その幾つになっても、ひたすら前を向いて戦うオーナーの背中を見て店長スタッフは奮い立つんであって店長スタッフに向かって説教するオーナーには余り魅力は感じないはずですよ(店長たちに向かって)、ちがうかな?(店長たちがドギマギ、、オーナーは目にウッスラ涙を浮かべながら)

Kオーナー:「社長、よくぞ言って下さいました、もし社長でなかったら、カチっと切れて私は途中で席をけってこの部屋を飛び出したでしょう、でも、本気で私の事を思ってくれてることが分かります!社長の真心が私を数十年前の原点に戻してくれました、いや~滝に打たれたような爽やかな心境です、そうです、そうです、あのころ、スタッフに向かってしゃべってる時間なんてなかった、来るお客さんに必死で接客して、気がついたら夜でした、、あ~スッキリした、あんた達、何か社長に聞きたいことある?、、ない!じゃ帰ろう帰ろう!

社長失礼しま~す」

(二日後、店長Aさんから私Mに電話がありました)

店長A:「Mさん、先日はありがとうございました、いつもオーナーはどこかへ研修に行ったら翌日は必ず報告ミーティングをやるんですが今回はないんでオーナーに「ミーティングしないんですか」って聞いたら「いいの、いいの、大丈夫、大丈夫、、」言ううもんですから、、、それで私はB店長に「ねえ、Bちゃん、このままじゃ、オーナーだけが社長さんから怒られて、私たちは無傷って何か違うんじゃないかしら、、」と話したらBさんも「そうよね、どう?オーナーに話して私たちだけでミーティングさせてもらおうよ」ということになり翌日2店舗合同緊急ミーティングになりました。

A店長:「2日前、先生と3人でO社長を訪問して、、かくかくしかじかで結局叱られたのは私たちじゃなくてオーナーだったの、、、(これを後でO社長に報告したら、俺は叱ってなんかないよ、、)そりゃホッとしたけど、目の前でオーナーがうっすら涙を浮かべる姿を見たとき、さすがに私は反省したの、B店長もおなじ心境だったって言うのよ

今回のキャンペーンもう、2週間過ぎたけど、目標を倍にしてオーナーの面目とO社長の鼻を明かしてやりたいんだけど、、どうかな、、って言うか私はもう決めてるんだけど、、、やろう!やろう!」ということになりましたのでO社長によろしくお伝えください」

(そのままO社長に報告したら、、社長はニコニコしながら、、そうかそうか!の一言。それから一週間後KオーナーからMに電話がありました)

Kオーナー:「Mさん、いま、店が大変なことになってまして、、売り上げグラフが上に突き抜けてまして、、、一週間前にAとBが私たちだけでミーティングをやらしてくれ、、と言うんで、、いいわよ、、とは言いましたが、、、みんな、なんだか張り切っちゃって、、、ともかく社長さんに、よろしくお伝えください」

(これも、そのまま報告したら社長はニコニコしながら、、そうかそうか!、、それから45日後店長A、Bさんから目標達成!115%、、、社長文句あるか!うちのオーナーは日本一!、、社長、ぜひうちの店に来てスタッフ全員と合ってください、待ってま~す。)

(その後KオーナーからもO社長に電話がありました)

Kオーナー:「社長、おかげさまで、自分が今どこにいるのかを教えてもらったこの二ヶ月でした。自分の周りに起こる事は、良かろうと悪かろうと全部自分というフィルムに光を通して世間というスクリーンに映し出されているんだから、それを良くしたかったら自分というフィルムにある像を良くすることが最も近道なんだけど、、、と社長が教えてくれたことを少しだけ分かりました、またすぐ分からなくなるとおもいますんで、その時はまた東京に行きますのでよろしくお願いします」

O社長:「先生、どっちが教えて、どっちが習う、、なんてありませんよ。ただ、何か問題が起こった時、人はおうおうにして、その問題の方に意識を取られますが、その原因の本質は、実は自分の心の中にあるもんです、でも、こう思えるのは中々出来ません、でも東京での懇談の時、先生が涙ぐまれたのを見て、先生の意識が自分に向かわれたな、、と思いました。みんな生身の人間です、私が落ち込んだときは、先生に私を是非ネジ巻いてやってください、お願いします。店長、スタッフの皆さんにくれぐれもよろしく」